オバフォー夫婦の高度不妊治療日記(夫版)

夫の側から見た、高度不妊治療および超高齢出産について記していきます。

不妊治療のプロセス

ここでは、不妊治療のプロセスについて書いていく。

これについてはいろんな人がブログに書いているし、KAWAは医学的なことはあまり詳しくない。けれど、次々と現れるハードルにうんざりしたのも事実なので、あくまでKAWA夫婦が受けた履歴として「どのようなルートをたどって何処にたどり着くのか」の目安として読んでもらえればと思う。

 

不妊治療の基礎として挙げられるのがタイミング法、だ。

これは、排卵日に性交する、という、妊娠したい夫婦が必ずやることなのだけれど、いつが排卵日かがなかなかわからない、ということで医者の指導を受けるというもの。

これが、KAWAにとっては面倒くさいもので。

なぜなら、卵子はKAWAのスケジュール上の都合なども考えずに勝手に排卵されてしまう。「今日がその日」とつまこに言われても、仕事が忙しくてなかなか帰れない日もあれば、飲み会が入っていればキャンセルもできない。おまけに「私はスケジュール空けて待っているのに」というつまこのイライラも甚だしくなってくる。今クールのタイミングをアンタのせいで逃した、と言われ、こちらのやる気もうせてしまう。目的があまりにストレートすぎて、何のための夫婦生活なのだろう、と考えてしまう事もしきり。

 

つまこ側のストレスもわかる。タイミングを計るためには毎朝起きたタイミングで忘れずに体温計を口にくわえなければならない。少しでも遅れると意味のない数値になるし、そうも言っていられないバタバタな日もあるだろう。それだけやってようやく見定めたタイミングの日に、ダンナが酔っぱらって遅く帰ってきたらキレたくなるともいうもの。

ちなみにそれでグラフをつけ高温期になるタイミングを見定めるわけだけれど、きちんとつけられたグラフを見るのはマーケット参加者であったKAWAにはちょっと面白い。まるで株価のチャートを見るようで、誤差もあれば「だまし」もある。そんなことを考えてたのか、とはつまこには言えないけどね。

今回は何とかなるかな、タイミングもバッチリだったし、何回か増援部隊も送ったし、などと考え、つまこの生理が来ませんように、と祈るように日々を過ごす。ところが生理予定日の1週間前には確実につまこのイライラ期をぶつけられて傷つくやらがっかりやら、を食らった後、ちゃんとつまこの「出ちゃった」が出た。

業界ではこれを「リセット」と呼ぶそうな。文字通り一からやり直しで、次も頑張らなきゃなあ、と思わされる。

不妊対策の基礎の基礎であり、不妊治療をつまこが拒否した後は、KAWA夫婦は緩い感じでこの自己判断によるタイミング法を続けてきたのだけれど。

 

これでダメなら、いよいよ本格的な不妊治療の始まりだ。

まず試すのが良く聞く「人工授精」。これは非常に科学のにおいがするネーミングだけど原理は単純で、ちゃんと精子を子宮に送り届けるというもの。攪拌機にかけて精製した精子をスポイトに採り、膣の奥に注入する。これで精子が子宮の中にちゃんと潜って行って卵子にたどり着けば妊娠の可能性が高くなる。

これは、1回で成功する、というのは稀であり、何度も繰り返す必要がある。KAWA夫婦のように残された時間を気にするカップルにはあまりこれに執着する意味はないようだ。ただ、前のクリニックで高度不妊治療をしていた際に排卵期を見誤り、採卵しようとしていた卵子が既に排卵済みであることを確認した際、慌てて人工授精に切り替えたことがあったが、当然成果は無し。

 

そして次が最後のトリデとなる高度不妊治療。

これには「体外受精」と「顕微授精」があって、どちらも排卵前の卵子を採ってきてシャーレに入れ、それに精子を交わらせる、というもの。いわゆる「試験管ベビー」である。

体外受精の場合はシャーレに精子を入れ(これを「ふりかけ」という)、卵子へのドッキングは自然に任せる。この様子を新宿のクリニックの説明会で見せてもらったが、あまたの精子卵子に群がり、その膜を一生懸命食い破って卵子にたどり着こうとするその姿は感動的ですらあった。でも、全員で力を合わせて膜を崩していくのに、入れる精子は一匹だけ。そこは要領のいい奴がするりと入って行くんだけど、それもまた人間社会と相関するものを感じる。

ただ、KAWAの精子の元気さを考えると、うちの夫婦がトライすべき、とされたのは顕微授精の方で、それは精子のうちイキの良さそうな奴を選んでスポイトに入れ、それを卵子に直接注入するというもの。そこまでいくと本当に来るところまで来た、という感じがするね。

 

以下、顕微授精(体外受精もほとんど変わらないと思う)の経るプロセスについて記載しておく。

これについては、KAWAはクリニックのある品川から山手線に乗って一駅一駅過ぎて行くイメージで考えている。

まず、品川からスタートし、血液検査等を済ませた後でまず立ちはだかる壁が「採卵」。卵巣で形成された卵子がプリプリに成熟し、しかも排卵される直前の状態で採らないといけないから、ここにテクニックが必要になってくるわけで、生理後のタイミングを見ながら薬を飲んだり注射を打ったりして排卵日を人工的に調節する。で、無事卵が取れた時点で「田町」についたとする。注射しかり採卵しかり、つまこは相当痛い思いをしながらも、前回はここまでもたどり着くことが出来なかったわけで。

 

採られた卵に精子を注入し(体外受精はふりかけで、顕微授精はスポイト注入で)、正常受精が確認できると「浜松町」。これは採卵後に即行われ、結果はクリニック化あらメールや電話で知らされる。自分たちではどうしようもない、ふたつ目のハードルという事が出来るだろう。

これをいったん凍結して受精卵の時を止める。その間に人工的に生理を起こさせて子宮の中をきれいにし、そこに薬でまたふかふかのベッドを形成するようにする。具体的には「子宮内膜」の厚さが基準となって妊娠に適した状態になっているかを確認し、「新橋」に到着する。

 

ここで、受精卵をいくつか解凍して母体に戻す(移植)作業に備えるのだが、これが無事に成し遂げられて「有楽町」とする。有楽町に至るまで、受精卵はここでふた通りのルートをたどる。ひとつは、直接有楽町に向かうと言うか、受精卵を母体に移植して、そこで育てて行くと言うもの。これは、卵にとって成長に一番適した場所は子宮であるという考えからなされる。

もうひとつは、解凍した受精卵をそのままシャーレの中で育て、胚盤胞と言う段階まで体外で持っていってから移植する方法。これは、いわば汐留あたりに寄り道すると考えようか。

そして、移植した受精卵がきちんと着床し、自分の成長に必要なホルモンを分泌し始める。これが念願の妊娠であり、列車はついに東京駅に着いた、というものである。

実はここが一番の難所であり、つまこ43歳にとっては統計的に成功率が10%程度というもの。ところが、良くも悪くも調査嫌いなKAWA夫婦は、不妊治療開始の時点ではその重みをしっかりと捉えてはいなかった。

初めからきちんとその難関度合いを意識していたならば、不妊治療など行わなかったかもしれない。いわば自分の偏差値も知らなければ難易度も知らず、ただ問題集だけ解いた後に東大を受験するようなもので、だからこそ迷わずに進むことができたと言う事実はあるのだが。

今は反省している